2015年9月3日木曜日

球面調和関数で近似

これは球面調和関数について質問されて,
上手く説明できなかったため,
自分の理解を深めるために書かれたものです.
物理のかぎしっぽ

の丸写しともいいます.
丸写しでも実際に書くと理解が深まるということは, 納得していただけるはずです.
ボトムアップに見ていきます.

ベクトル

一連の演算を備えた集合をベクトルと定義します.
定められた演算を備えていれば, どんな集合でもベクトルです.
高校 ベクトルで検索すると, 向きと大きさを持った量という解説がされています.
確かにそのように教わった記憶があります.
向きと大きさを持ったベクトルを幾何ベクトルとして区別しておきます.

重要なことは, 向きと大きさがなくともベクトルが定義されるということです.

ベクトルの定義を満たす関数列, $(f_0(t), f_1(t), \ldots)$ もベクトルになります.

直交系

内積を持つベクトル空間上の集合$\lbrace x_t \rbrace $が, 内積$\left<,\right>$について互いに, $\left< x_i,x_j\right> =0 \ (i\neq j)$
が成り立つとき, 集合$\lbrace x_t \rbrace$は直交系であるといい,
直交系$\lbrace e_t \rbrace $が内積のノルムについて$|| e_t ||=1$となるとき, $\lbrace e_t \rbrace $は正規直交系であるという.

正規直交系$\lbrace e_t \rbrace $が任意の$t$について, $\left< x,e_t \right> =0 \Rightarrow x=0$
のとき, $\lbrace e_t \rbrace $を正規直交基底という.
$\lbrace e_t \rbrace $が正規直交基底のとき, 任意の$x$は$\lbrace e_t \rbrace $の線形結合で展開することができる.
$\displaystyle x=\sum_{t}^{}\left< x,e_t \right> e_t$

正規直交基底ベクトルの線形結合によって, 任意のベクトルが表現できることは,
直観で理解し易いと思います.

直交関数系

2つの関数$f_0(t), f_1(t)$について, $\int_{-\infty}^{\infty} f_0(x)f_1(x+\tau) dx$を相関関数と呼ぶ.
相関関数は2つの関数がどれだけ似ているかを表す.
$\tau =0$のとき, 相関関数は関数の内積といえる.

以下がなりたつとき, 関数列$\lbrace f_t(x) \rbrace$は互いに直交し, 直交関数系という.
全ての関数について, $\int_{-\infty}^{\infty} f_t(x)f_t(x) dx=1$ならば, 正規直交関数系である.
$\begin{eqnarray} \int_{-\infty}^{\infty} f_i(x)f_j(x) dx \begin{cases} \neq 0 & ( i = j ) \\ = 0 & ( i \neq j ) \end{cases} \end{eqnarray}$

関数列もベクトルであり, 正規直交関数系が定義される.
つまり, 任意の関数$h_t$は, 正規直交関数系$\lbrace f_t \rbrace$の線形結合で展開することができる.
また, 任意の関数が, ある直交関数系で展開できるとき, その直交関数系を完全系という.

球面調和関数

やっと本題.
球面調和関数は次のような関数である.
$Y_l^m (\theta,\phi)=(-1)^{\frac{(m+|m|)}{2}} \sqrt{ \frac{2l+1}{4\pi} \frac{(l-|m|)!}{(l+|m|)!}}P_l^{|m|}\cos \theta e^{im\phi}$
$P_l^m$はルジャンドル陪関数で,
$\begin{eqnarray} P_l^m(x)= \begin{cases} \frac{(1-x^2)^\frac{m}{2}}{2^ll!}\frac{d^{l+m}}{dx^{l+m}} (x^2-1)^l (m>0) \\ \frac{1}{2^ll!}\frac{d^l}{dx^l} (x^2-1)^l (m=0) \\ \frac{(1-x^2)^\frac{|m|}{2}}{2^ll!}\frac{d^{l-|m|}}{dx^{l-|m|}} (x^2-1)^l (m<0) \end{cases} \end{eqnarray}$

重要なことは, 球面調和関数は完全直交関数系であり, 任意の関数$f(\theta,\phi)$を展開できることである.
$f(\theta,\phi)=\sum_{l=0}^{\infty}\sum_{m=-l}{l} A_{lm}Y_l^m(\theta,\phi)$

$A_{lm}$は, $A_{lm}=\int_0^{2\pi} d\phi \int_0^\pi \sin \theta d\theta Y_l^m(\theta,\phi) \ast f(\theta,\phi)$ である.
$Y_l^m \ast f は, Y_l^mとfの相関をとっている.$

この式を見ると, ベクトルの直交基底による線形結合になっているのがわかる
また, 総和は$\sum_{l=0}^{\infty}$と$\infty$である.
実際にCG等で使用する場合は, 有限の値を使用する. そのため, 関数$f$が完全に再現されるとは限らない.


まとめ

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